「ちょっと!2階の部屋まだ片付かないの?」
階段の下から母の怒鳴り声が聞こえる。
「もう少しで終わるから」
私はそう返し、押し入れから最後のダンボール箱を引っ張り出した。
「解体工事、来週なんだからね!早く終わらせなさいよ」
「わかってるって」
お爺ちゃんが死んでから、何ヶ月が過ぎただろう。
夏休みくらいにしか来れなかったこの家には、特に何の思い出も残っていない。
私は淡々と箱の中身を分別する。
お薬手帳は燃えるごみで、幼い頃の従兄が忘れていったと思われる、角ばった赤いヒーローの人形は燃えないごみ。
中身を全てごみ袋に移し替え、空になったダンボール箱を畳んで廊下に立てかけた。
「お母さん、終わ